(新エネルギー新聞 2020年12月掲載記事を一部編集)
太陽光発電所のO&Mにおいて、遠隔監視データの活用が重要なポイントであることは、どれだけ強調しても強調しすぎ、ということはない。
ただ「遠隔監視データの活用」と一括りに言っても、それには2つの側面がある、ということを意識しておきたい。1つの側面だけ捉えて、「うちは遠隔監視データをしっかり見ている」と思い込んでいることが多い。
2つの側面とは、『kW(電力)』と『kWh(電力量)』の把握だ。
そもそも『kW』と『kWh』の違いを理解していない方も少なからずおり、太陽光業界の関係者においてすら誤用がよく見られるので、発電事業者においては尚更だろう。
まず『kW』と『kWh』の違いだが、『kW』は、今現在どれだけ発電しているか、を見ることで、車で例えると、今現在の速度と言える。それに対して『kWh』は、累計どれだけ発電したか、で、車で言うと移動距離と同じ意味だ。
これまで遠隔監視を『見る』という行為は、『kW』の話がほとんどで、今現在どれだけ発電しているかの把握に過ぎない。
それに対して遠隔監視を『解析する』のは、累計の『kWh』がどのように推移しているか、を把握することだ。
売電金額は『kWh』の累計値に売電単価を掛けたものなので、発電事業の収支に大きな影響を与えるのは『kWh』の方である。
車で例えると『kW』が速度計を見ること、『kWh』はタコグラフ(運行管理計)を解析すること、と言えるだろう。
速度計を見るだけでは、どのぐらいの距離を走ってきたのか、時間に対してその距離は多いのか少ないのか、距離が少ないとして何が原因と想定できるか、などを検討することはできない。単に「今、時速100kmで走行している」という事実と、「だからなんら問題はない」という願望がないまぜになっているだけだ。実際には「1時間前まで、本来は時速100kmで走れるはずなのに60kmしか速度が出ていなかった」かもしれない。そのような不具合の履歴は、『kW』を見るだけでは把握できない。
当社が一般社団法人新エネルギーO&M協議会と共同開発し、会員向けに配布している「発電量解析アプリ」は、簡易的に『kWhを解析する』ことで太陽光発電所の稼働状況をより具体的に把握するためのものだ。
遠隔監視を『見る』ことは第一歩だが、その次には『解析する』ことでO&Mの点検効率や実効性を高めることができる。
ぜひ、『(kWを)見る』と『(kWhを)解析する』の両面で、遠隔監視データを使いこなしていただきたい。
(新エネルギー新聞 2020年12月掲載記事を一部編集)