(新エネルギー新聞 2020年11月掲載記事を一部編集)
太陽光発電所のメンテナンスにおいても、「スマート保安」という考え方が出始めている。
そもそも「スマート保安」は、『化学プラントなど重要インフラの管理において、IoTやAI、ドローン・ロボット等の先進技術を開発・導入することで人員の代替とし効率化を図ること」から始まっている。
重要インフラの老朽化が進む中、メンテナンスの現場を支えてきたベテランが引退する時期を迎えつつあり、人口減少の影響から人材確保もままならず、メンテナンス体制を崩壊させないための手段として経産省が強力に推進している。
ベテランによる長年の勘など、属人的な部分をIoTやAIなど「スマート化」することで、極力、人手に頼らずに安全性・生産性の維持を目指す。
電力設備も重要インフラのひとつであり、太陽光発電所も「スマート保安」の採用を目指して動き始めた、という流れだ。
スマート化技術としては、
- センサー活用による大量・多種のデータをリアルタイムに取得
- 作業記録等を電子データ化して蓄積
- AI等でデータを分析し予兆を検知
- 重大事故につながる予兆に限定して作業員に周知
というのが代表的なもの。
この流れを見て、気づく方も多いのではないだろうか?
「なんだ、遠隔監視システムを付ければ良いのか」と。実際、1.、2.に関しては、遠隔監視そのものだ。
ただ、3.に関しては、自動でできる遠隔監視は多くない。「今現在、どうなってるか?」は把握できるが、「データを分析しトラブルの予兆として検知できる」ところまでの機能は、ほとんどが持っていない。
「スマート保安」を実現するために、高機能・高価格な遠隔監視に入れ替える検討もできるが、費用対効果を考えるとよほど大規模な発電所でなければメリットは出しにくいだろう。
そこで1.、2.で取得したデータを活かし、少しでも効率化を図るために3.、4.を簡易的に人手で実施する、というのが、低圧や中規模の高圧発電所での現実的な答えとなるのではないだろうか。
100点満点のスマート保安とは言えないが、ちょっとした発想の転換と少しの手間で、70点ぐらいまでは近づけそうだ。
当社が一般社団法人新エネルギーO&M協議会と共同開発し、10月から会員向けに配布し始めた「発電量解析アプリ」も、まさに遠隔監視データを「簡易的に人手で分析」するためのものだ。
分析結果から長期的発電量低下の傾向を捉え、現場の点検作業員に周知することで、点検効率や実効性を高めることができる。
今ある遠隔監視データの分析なら追加投資ゼロでできる。太陽光発電所における「スマート保安」に、できるところから取組んでみてはいかがだろうか。
(新エネルギー新聞 2020年11月掲載記事を一部編集)