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発電量とコストの考え方

発電量低下を発見しパネル洗浄で8%回復 No.50

発電量低下を発見しパネル洗浄で8%回復 No.50

(新エネルギー新聞 2021年7月掲載記事を一部編集)

発電量の変化を数値で示すことがオーナー理解を得る近道
発電量の変化を数値で示すことがオーナー理解を得る近道

先日「太陽光発電所の発電量が低くなっている気がする」と、ある発電事業者から相談を受けた。
2015年に発電を開始し7年経過した低圧の屋根上発電所で、ここはオーナーが遠隔監視をよく見ており「何かおかしい」と気づくことができた。12ヶ月移動平均で解析したところ、初期ピーク値に比べて直近の発電量が17%低下し83%になっていることが判明した。

7年間で17%の低下はさすがに大きすぎる。年換算すると-2.43%ずつ落ちている計算になる。
太陽光発電所は経年劣化で少しずつ発電量が落ちるのはやむを得ないが、一般的な許容値としては年間-1%ぐらいまでだろう。20年経過後に80%の発電量ならば、多少落ちたがまあ仕方ない、と言える範疇だ。
しかし年換算-2.43%となると、20年後には51%程度まで落ちてしまう計算で、さすがにこれでは収支計算が合わなくなる。

現地で目視点検したところ、顕著なパネル汚れが見つかった。屋根上設置ということもありパネル角度はほぼゼロ。7年間で蓄積した汚れの影響が主要因と想定したが、他にもパネル故障など複合要因も考えられるので、パネル洗浄と電気的点検を実施することとした。

数週間後、パネル洗浄を行い、その前後でIVカーブ測定も実施した(洗浄効果の測定とパネルの不具合点検を兼ねて)。パネルの見た目はかなりきれいになったため測定結果も上々だろう、と思ったが、意に反して洗浄前後での結果には発電量に顕著な違いは見られなかった。測定結果からは、パネルの不具合が原因とも思えない。
そこでよくよく見直したところ、洗浄の前後で日射量が大きく変化していたことに気付いた。特に洗浄後の日射量が300W/㎡程度と低かったため、補正による誤差が大きく影響してしまったことが考えられる。
本来ならPCS1台分の洗浄をした段階で、洗浄していないPCS部分とタイミングを揃えて測定すれば効果をはっきり示すことができただろう。とはいえ、やり直すこともできない。

「洗浄効果不明」のままでは、オーナーへの報告書が書きづらいので、別の方法で洗浄効果を検証することとした。
方法としては、洗浄前と後の晴天日を選び、1日単位の発電量(kWh)による比較をしてみた。気象庁による日射量データも絡めて検証したところ、無事、「洗浄前よりも8%程度発電量がアップしている」ことが分かった。
初期ピーク値より-17%低下していた内、8%は洗浄で取り戻すことができた。残り-9%だが、7年経過で-9%なら年換算-1%よりは少し悪い程度。これ以上、コストを掛けて徹底追求するよりも、経過観察(定期的な発電量監視)しながら発電量が大きく低下したら、また対策を検討する、というやり方が賢明だろう。

いずれにしても、O&Mを行う上で遠隔監視データをしっかり解析し、数値で示すことがオーナーの理解を得る上で欠かせない時代になった、という点は明記しておきたい。

(新エネルギー新聞 2021年7月掲載記事を一部編集)

 

  1. 掲載文書は、当協議会の関係者が、それぞれの文責で記述しています。
  2. 掲載文書中では、事例を取り上げて具体の対応に言及していますが、必ずしも原因や事象、対応を掘り下げて網羅的に記述するものではありません。
  3. 掲載文書は、主として低圧発電所を想定して記述しています。記載内容の中には高圧以上の発電所に通用するものもありますが、高圧以上の発電所に当てはめる場合は、法定の安全措置義務等との整合を考慮してください。

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