太陽光発電設備の普及に伴い、自然災害による事故リスクへの関心が高まっています。
特に「落雷」は、盗難事故と比較して発生件数こそ少ないものの、一度の事故による損害額が大きく、設備全体に深刻なダメージを与える傾向にあります。
第8回では、雷の発生メカニズムから、SPD(避雷器)を用いた正しい対策、そしてリスク計算の手法について解説します。
【動画の要約】
温暖化で倍増する「雷リスク」と地域特性
気象庁の観測データによると、過去50年間で年間の雷雨日数は約2倍に増加しており、地球温暖化による気温上昇との相関が指摘されています。 地域によって雷の特性は異なります。北関東や九州などでは夏に多くの落雷が観測される一方、日本海側では冬季に「冬季雷」と呼ばれる特有の現象が発生します。
冬季雷はエネルギーが非常に大きく、下から上(大地から雲)へ向かって放電する場合があり、甚大な被害をもたらすのが特徴です。
基板焼損からコンクリート破壊まで及ぶ被害
落雷による被害は、電源線や通信線を通じて建物内に侵入する「雷サージ」によって引き起こされます。
これにより、電子機器の基板が黒く焦げたり、ICチップにクラック(ひび)が入ったりして故障に至ります。
また、直撃雷を受けた場合は、電柱のコンクリートを破壊するほどの物理的な損傷を与えることもあり、人命にも関わる危険な現象です。
近年の電子機器は小型化・省電力化が進んでいるため、わずかな過電圧でも故障しやすく、外見上は無傷でも内部が破壊されているケースが増えています。
SPD(避雷器)の役割と「誤ったイメージ」
雷対策として最も一般的なのがSPD(サージ防護デバイス)の設置ですが、その機能について誤解しているケースが少なくありません。
SPDは「雷を吸収する」ものではなく、「雷サージをアース(接地)へ逃がすバイパス回路」です。 通常時は電気を通さないオフの状態ですが、雷サージが侵入した瞬間にオンになり、電流をアースへ流すことで、機器にかかる過電圧を抑制します。
重要なのは、電源線だけでなく、通信線など外部と繋がる全てのルートにSPDを設置することです。片方だけに対策しても、電位差によって未対策のルートへサージが流れ込み、機器を破壊してしまうからです。
「等電位化」と「配線長」が施工の鍵
SPDを設置しても被害防げない場合、その多くは施工方法に問題があります。
最も重要なポイントは、SPDと保護対象機器のアースを「共通(等電位)」にすることです。アースを別々にすると、雷サージ侵入時にアース間で電位差が生じ、機器を経由して電流が流れてしまうため、かえって被害を招く恐れがあります。
また、SPDとアースを繋ぐ配線の長さも重要です。配線が長いと、雷電流が流れた際に配線部分で電圧降下(電圧の上昇)が発生し、その電圧がそのまま機器にかかってしまいます。
JIS規格では配線長を0.5m以下にすることが推奨されていますが、できる限り短く施工することが、機器を守るための鉄則です。
計算で求める「落雷リスク」と対策の要否
自身の管理する設備にどれくらいのリスクがあるのかは、JISやIEC(国際電気標準会議)の規格に基づき計算で求めることが可能です。
地域ごとの年間落雷密度、建物の受雷面積、周囲環境係数などを用いることで、「年間で何回直撃雷を受けるか」「近傍雷による誘導サージを何回受けるか」を算出できます。
例えば、20年間の運用期間中に直撃雷を受ける確率が極めて低い場合は外部雷保護システム(避雷針など)を省略できる可能性がありますが、誘導サージのリスクが高い場合はSPDの設置が必須となります。
このように、設備ごとの重要度や運用期間、立地条件に合わせて、科学的根拠に基づいた対策を検討することが推奨されます。
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【第9回】雷対策の具体の方法[太陽光発電設備の雷対策|応用編]


