第9回は「太陽光発電設備の雷対策・応用編」として、JIS規格に基づいたリスク評価の計算手法から、具体的な設計・施工のポイント、そして保守点検の注意点までを深掘りして解説します。
前回の初級編で触れた「等電位化」の考え方をベースに、実際の設備図面を用いた実践的な内容となっています。
【動画の要約】
対策の要否は「計算」で数値化して判断する
雷対策をどこまで行うべきかは、感覚ではなく計算によって判断することができます。JIS規格に基づき、その地域への年間落雷数や建物の面積などから、「直撃雷を受ける確率(ND)」と「近傍への落雷による誘導雷を受ける確率(NM)」を算出します。
この計算結果に設備の運用期間(例えば20年)を掛け合わせ、リスク係数と比較することで、「外部雷保護システム(避雷針など)が必要か」「SPD(避雷器)によるサージ対策が必要か」を客観的に評価できます。
計算の結果、直撃雷のリスクは低くても、誘導雷のリスクは高いというケースは多く、その場合はSPDの設置が必須となります。
直撃雷対策は「独立避雷針」が推奨される
計算の結果、避雷針などの外部雷保護システムが必要と判断された場合、その施工方法には注意が必要です。
太陽光パネルの架台に直接避雷針を取り付ける方法もありますが、これでは落雷時に架台の電位が上昇し、直流電源線へ電流が分流して接続箱やパワーコンディショナ(PCS)を破壊するリスクがあります。
そのため、架台とは離れた場所に「独立した避雷針」を立て、そこへの落雷電流をメッシュ接地などを通じて逃がす方法が、設備を守る上で最も有効です。
設備をエリア分けする「等電位の島」という考え方
誘導雷(雷サージ)対策の基本は、設備ごとの重要度や配置に応じて「等電位の島」を作り、その島ごとに接地(アース)を共通化することです。
例えば、重要度の高いPCSと変圧器を一つの島(グループ)とし、少し離れた接続箱とパネルを別の島とします。それぞれの島の中では、すべての機器とSPDの接地を一点にまとめます。こうすることで、雷サージが侵入しても島全体の電位が同時に上昇するため、機器間に電位差が生じず、故障を防ぐことができます。
また、配線経路にも工夫が必要です。配線が大きなループ(輪)を描くと、誘導雷による電圧が大きくなりやすいため、プラス線とマイナス線を沿わせて配線し、ループ面積を極力小さくすることが重要です。
高圧受電設備における接地の「誤った常識」
単線結線図を用いた設計段階でも注意すべきポイントがあります。特に高圧受電設備において、高圧避雷器(LA)の接地(EA)と、機器の接地を「別々にすべき」と指導されることがありますが、雷対策の観点からはこれは誤りです。
接地が別々だと、落雷時に接地間で電位差が生じ、機器絶縁が破壊される恐れがあります。必ずLAの接地と機器の接地は共通(連接)にしてください。
同様に、低圧側においても、PCSや制御盤のアースはSPDのアースと共通にすることが鉄則です。
SPDの交換は「全相まとめて」が原則
最後に保守点検についてです。SPDは万が一故障しても安全に回路から切り離される構造になっていますが、バリスタ等の部品単体をネジ止めしているような古い設備では、短絡故障時に発火するリスクがあるため注意が必要です。
SPDの故障表示が出た際の交換作業にも重要なルールがあります。例えば三相交流用SPDのうち一相だけが故障していても、必ず「全相」交換してください。雷サージは全相に均等にかかるため、他も寿命が近いからです。
また、絶対にやってはいけないのが「切れたヒューズ(分離器)だけを交換して電源を入れる」ことです。
SPD自体がショートしている状態で通電することになり、作業者の目の前でアーク放電が発生し大変危険です。
必ずSPD本体ごと交換を行ってください。


