(新エネルギー新聞 2020年4月掲載記事を一部編集)
太陽光パネルの洗浄に関しては、発電所ごとに状況が異なるため、一概にこうすべき、と言う正解はない。
ただし、ごく単純化して考えると、
『パネルや環境に悪影響を与えず、費用対効果が得られるなら洗浄した方が良い』とは言える。本来、パネルが汚れて良いことはひとつもないので、多頻度に洗浄したいところだが、方法によってはパネルや環境にダメージを与えてしまうこともある。またコストと効果のバランスも考えながら検討しなければならない。
今回、テスト的に一部のストリングを洗浄した発電所は良好な結果を示している。まず、洗浄を提案した経緯から説明すると、
- 遠隔監視システムのデータ解析で、毎年平均4~5%ずつ発電量が下落
- 初年度に比べて5年目には80%を下回る発電量
- 原因のひとつであるPCSの不具合を是正
- それでもまだ発電量が低いので洗浄を提案
という流れだ。
PCS是正後の遠隔監視データの解析と目視によるパネル汚れの状況から「10%近く汚れで発電量が下落している」と推測した(汚れの部位や濃淡によっても減少量は大きく変わる)。
ただしあくまでも推測に過ぎないので、全体を洗浄する前に、一部のストリング(遠隔監視データを取得できる最小単位)でテスト洗浄を実施することとした。
計算上は10%近く取り戻せるはずだが、本当にそうなるか?は、やってみないと分からない。例えば、5年間堆積した汚れが、きれいに落ちるのか?、焼付きのように残ってしまわないか?、もしくは汚れ以外の原因もあるのでは?、など。
洗浄のやり方としては、特殊な機械は使わず手作業でブラシでこすり、洗浄用の水は純水をベースに一工夫したものを使った。ただし作業当日に雨が降ったため、ほとんどは雨水での洗浄となってしまった。
結果、洗浄した部位の発電量ははっきり上昇した。遠隔監視データで、洗浄したストリングとその近隣との発電量の差を確認したところ、平均して7%程度向上している。
天候によって効果が異なり、晴れの日は10%近く上がり曇りの日は5%程度の向上に留まる。直射光が多いか、散乱光が多いかが影響しているようだ。
平均7%の向上で洗浄コストをまかなえるか?、という点は、1年間洗浄効果を維持できれば間違いない、とは言い切れるが、まだ洗浄後2ヶ月なので今後の推移を見守るしかない。
ただ、何もしなければ汚れる一方(つまりは発電量が落ちる一方)なので、大きな持ち出しを避けられそうならば洗浄した方が良い、と結論付けて、発電所全体の洗浄を提案することとなった。
(※2021年4月追記 その後の結果は非常に良好で、洗浄後1年間の売電アップ分で洗浄費用をまかなってもお釣りが出るほどだった)
(新エネルギー新聞 2020年4月掲載記事を一部編集)