(新エネルギー新聞 2020年6月掲載記事を一部編集)
最近、低圧の発電事業者から「発電量がシミュレーション値よりも10%以上低い。何が原因?」という問い合わせを続けざまに受けている。
原因を推測するために、ある発電所でヒアリングと遠隔監視データを解析した。
・購入後1年間の総発電量で10数%低い
・過積載でパネル容量は100kW程度
・場所は関東
・遠隔監視データ上で重大なアラートはない
・遠隔監視でPSCごとの発電量のバラツキはほぼない
・年間のシミュレーション値は11万kWh以上
現場や点検結果を見ていないため確実なことは言えないが、第一感は『過大シミュレーション値が原因』と推測できる。販売店によるシミュレーション値自体が、そもそも高すぎたのではないだろうか?
「表面利回り10%以上」でなければ足切りされて購入の検討すらされないという風潮がある中、販売店が「発電量シミュレーション値を上げ」て、見かけ上「表面利回り10%以上」を装う売り方が横行している。
よくあるのが「過積載の発電所なのにピークカットを考慮しない」というもの。パネルを100kW積んでいれば、100kWの発電所としてシミュレーション値を作ってしまうのだ。低圧の場合、当然PCSは50kW未満なので、パネル100kW分の発電量をすべて使い切ることはできずピークカットが発生する。
このピークカット分は「パネル100kWなら10数%発生する」と言われており、シミュレーション値より10数%低い、というトラブルと数字が合致する。
仮に販売店がピークカットを知らないなら無知としか言いようがないし、知っていて無視もしくは悪用しているならば騙す意図があるとしか思えない。
発電事業者が騙されないためには、100kW過積載の低圧発電所が一般的にどのぐらいの発電量があるか、目安を知っておくべきだろう。設置エリアやパネル・PCSの種類、架台の形状、パネル角度、影の有無、施工品質などさまざまな要因があるが、簡単に言ってしまうと、およそ年間10万kWh程度がひとつの目安だろう。もちろん諸条件が揃っていれば低圧でも年間12万kW以上という実例もあるが、それは特別。シミュレーション値で10万kWh以上の数字が提示されている場合、その根拠をしっかり聞いて納得できるか、よく検討してほしい。
もし購入済みの発電所でこのようなトラブルが発生した場合、できることは少く、
・販売店と交渉する
・実発電量に合わせて運用管理費を圧縮する
ぐらい。
信頼できるO&M業者と相談しながら対応するのが良いだろう。
(新エネルギー新聞 2020年6月掲載記事を一部編集)