(新エネルギー新聞 2020年5月掲載記事を一部編集)
新型コロナウイルス対策で様々な業界が多大な影響を受けているが、産業用太陽光発電所のO&Mに関しては、今のところネガティブな話はあまり聞こえてこない。
そもそも発電所は人が少ない地方に設置されることが多く、都心部のように不特定多数が「密」になる状況はまずない。
太陽光発電所のO&Mはエネルギーインフラを支える業務であり、国からも「感染対策には十分な注意を払った上で業務の継続」を要請されており、この点においては、今のところ問題とはなっていない。
ただ、新型コロナ対策に限定せず、もう少し大きな視点でO&Mを俯瞰したとき、果たして産業用太陽光発電所のO&Mは、今のままで持続可能なのか?、という疑問を持たざるを得ない。
持続可能な社会の要となる太陽光発電所の、O&Mが持続可能ではない、という落語のような話だが、そろそろ現実問題として直視するタイミングだろう。
O&Mが今のままでは持続可能ではない、と考える主な理由は次の2点だ。
- 60万件以上の産業用太陽光発電所をくまなく点検するための人材が足りない
- 売電単価が安い発電所ではO&Mの費用を捻出できない
1の人材不足は、人口減少社会においてすべての業界に共通することだが、現場作業が中心の業種では尚更深刻な問題となる。仮に60万件の発電所を年に1回点検するとして年に60万回、二人一組で1日平均2件点検できるとし、延べ60万人日が必要な計算だ。
また、売電単価が40円~21円(kWh)ぐらいまでなら、O&M費用を捻出するのも不可能ではない。だが、これから建設が進む14円(kWh)や自家消費の案件で、同じ金額を捻出することは、かなり困難だろう。
ではどうするべきか?
「今のO&Mでは難しい」が「O&Mのあり方をコペルニクス的転回をすれば可能」と考えている。
これまでは現場での点検偏重の労働集約型だったが、これからは遠隔監視のデータ解析をベースとした日常管理に力を入れることで、極力人手を掛けずに実効性の高いO&Mに組み替えていくべきだろう。
O&Mのパーツごとの細部にこだわることも大切だが、5年後、10年後も持続可能なO&Mとするために、そろそろ大局観を持って考えるべきタイミングではないだろうか。
(新エネルギー新聞 2020年5月掲載記事を一部編集)