(新エネルギー新聞 2020年3月掲載記事を一部編集)
前回、太陽光発電所の法面からの土砂流出が大きな問題を引き起こしていることを紹介した。土木や造成の知識が浅い太陽光業界では、これまで発電所の法面対策に適した工法を見つけられないでいたが、やっと法面工事のプロから有望な工法が提唱され始めている。
それが『ポリソイル緑化工』という工法だ。
そもそも法面工事は山林の治水対策として、およそ90年前から始まり工事の種類や規模に応じて様々な工法が開発されている。
地すべりや大規模崩壊の対策に使われるグランドアンカー工法や中・小規模の崩壊対策に使われるロックボルト工法、それらと組合わせて使われる吹付法枠工や受圧板工。規模が小さい崩壊や落石対策としては、吹付法枠工やモルタル・コンクリート吹付工などがある。
これらは構造物系の工法だが、緑化による法面保護を目的とする植生工もあり、『ポリソイル緑化工』はその一種となる。植生工は、さらに植栽工と播種工(はしゅこう)に分けられ、植栽工は芝を張ったり樹木を植えたりという方法で、播種工は植物の種子を吹き付ける(もしくは貼り付ける)方法となる。
『ポリソイル緑化工』は、植生工の中の播種工に含まれ、「特殊な液体=ポリソイル」に混ぜ合わせて植物の種子を吹き付けて、法面に草を生やすことで土砂流出を防ぐ。「ポリソイル」自体は崩れやすい土を糊で固めるイメージだ。沖縄で海への赤土の流れ込みを防止するために使われていて20年以上の実績がある。
施工後1~3日で「ポリソイル」が固まり、時間雨量100mm程度の豪雨でも土砂が流されることはほとんどない。半年から1年程度は固まったままで、その間に混ぜ合わせて散布した植物の種子が発芽し法面を安定させる。短期的には「ポリソイル」で固め、長期的には植物がカバーする、という方法だ。
「ポリソイル」を使わず、単に種子を播くやり方もあるが、発芽前に雨が降って種子ごと土砂流出、という危険性があり、速効性・確実性・経済性を兼ね備える『ポリソイル緑化工』の方が優位だろう。
実際、3年前から太陽光発電所で施工され始め、施工後の経過は非常に良好だ。また太陽光発電所に限らず、山林の治水工事として公共工事でも使われるようになってきている。
とはいえ『ポリソイル緑化工』が万能な訳ではない。表面の土砂流出を防ぐことはできるが、そもそも構造に問題があるような法面では太刀打ちできない。
法面工事には様々な工法がありプロに相談しながら適材適所で活用するべきだが、『ポリソイル緑化工』は費用感も含め、太陽光発電所の土砂流出対策として最初に検討すべき工法と言えるだろう。
(新エネルギー新聞 2020年3月掲載記事を一部編集)