(新エネルギー新聞 2016年2月掲載記事を一部編集)
先日、現地調査を行った発電所は、太陽電池モジュールへの、『影』の影響を全く考慮していませんでした。
太陽電池モジュールにかかる影は、例えそれがわずかであっても、発電量の大幅な低下を招きます。
上の写真は、先日調査に行ってきた発電所です。
建物によって生じる影について、全く配慮することなく設置されており、モジュールの上に影がはっきりとかかっていました。
建物や電柱、フェンスなどが生み出す影は、発電量に甚大な悪影響を及ぼします。
太陽電池モジュールについて、構造をご存知ない方は、影がかかった部分だけ発電しなくなると思いがちですが、実際はそうではありません。
モジュールは、大まかに3つの部位に分けることができ、1つの部位のごく一部分にでも影が掛かっただけでも、その部位全体が発電しなくなります。
つまり、『ごく一部に影がかかるだけで、モジュールの3分の1が発電しなくなる』のです。
本来は、いかに発電ロスを減らすかに注力するべきですが、このような初歩的なミスを犯してしまっているようでは、この発電所を設計・施工した施工店は、『太陽電池モジュールのことを理解していない』と言わざるをえないでしょう。
(影を避けられない場合もありますが、その際は、影に強いCIS系モジュールを使うなどの対策を考えたいところです。)
モジュール上の影が及ぼす悪影響は、発電ロスの問題だけにとどまりません。
継続的に影がかかるとモジュールの故障を引き起こし、最悪の場合、発火する危険性もあります。
発火に至るまでの経緯を簡単に説明すると、以下のようになります。
- 影がかかった部分が抵抗になる
- ⇒抵抗が上ることで、電流がバイパスダイオードを迂回する(発電量の低下)
- ⇒継続的に電流が流れることで、バイパスダイオードが故障する
- ⇒抵抗が高い部分に無理に電流を流すことで、ホットスポットができる
- ⇒ホットスポットが悪化すると、最大500℃になることも
- ⇒落ち葉など燃えやすいものがホットスポットに触れて火災になる
対策としては、できるだけ影がかかる時間を減らすことですが、それが難しい場合は、定期点検を行い、『モジュールの抵抗値が上っていないか』、『ホットスポットの温度が上がっていないか』を管理するしかないでしょう。
そして、危険な状況に陥っていないかどうかの確認を怠らず、必要であればモジュールを交換することが重要になります。
太陽光発電の発電量の異常の原因は、実は遠隔監視システムのデータを解析すれば把握できます。
詳しくは下記URLで紹介しています。
太陽光発電の発電量が少ない?発電量解析で原因の特定方法を解説!
(新エネルギー新聞 2016年2月掲載記事を一部編集)