(新エネルギー新聞 2021年4月掲載記事を一部編集)
遠隔監視システムの発電量データを解析することで、太陽光発電所の売電ロスの存在を「見える化」できる。一般社団法人新エネルギーO&M協議会が会員向けに提供している「発電量解析アプリ」を使えば、それが簡単にできる。
実際に「12ヶ月移動平均法」で解析した62件の発電所(低圧)のデータを、散布図にまとめたのが上図で、青の点がひとつずつの発電所の値だ。
この散布図を理解するために、まずは「12ヶ月移動平均法」で何が分かるか、整理しておこう。
・発電所のピーク時(1年単位)の発電効率から、直近値がどれだけ低下しているか把握できる ・1年単位で検討するので、季節要因は無視できる ・発電効率(日射量あたりの発電量)で検討するので、日射量の増減も無視できる ・実発電量から計算するので、発電阻害要因の影響は含まれる |
つまり当該発電所がベストに発電していた1年間に比べて、直近の1年間の発電量がどう下落したか?、を実際の発電量から把握できる。発電阻害要因が最初から存在していても、その影響が途中で増大しなければ発電効率は下がらないため、どうしても避けようのないものは「発電所の癖」として織り込んだ上で、「発電量の下落の進行具合」が分かる。
上記散布図で、横軸は【ピーク値と直近値の期間(月)】で縦軸は【低下率】を示す。
赤い線は上が年換算-1%、下が年換算-2%を示し、個別の発電所の下落率を判断するためのガイドラインとした。
散布図を見ると年換算-1%未満が全体の20%強(13件)と少数派で、最も多い-2%以上の下落が45%以上(28件)、年換算-1%と-2%の間の発電所が約34%(21件)を占めた。
解析する前は発電量下落率は年換算-1%程度が中心と想定していたが、実際にはそれよりもはるかに大きいことが分かった。約半数の発電所が、5年で-10%以上もの売電ロスとなる可能性がある。
発電量シミュレーションでは年換算-1%、20年後に80%の発電量が残っているという前提で作られることがほとんどなので、年換算-2%以上の下落では、発電事業で利益を残すことは難しいだろう。
複数の発電所の売電ロスがここまで大きいことを示すデータは、これまで見たことがない。これほどにも大幅な発電量下落が当たり前に発生していることに、正直かなり驚いている。
(統計的に正しい手法で算出している訳ではないので、たまたまダメな発電所が揃っただけかもしれないが・・・)
後で売電ロスに気づいても失った分を取り戻すことはできないが、発電量解析で気づくことができれば、将来のロスは未然に防げる。
売電ロス防止のために、O&Mのひとつとして定期的な発電量解析の実施をお勧めしたい。その際には「発電量解析アプリ」を活用できるO&M協議会の会員に相談して欲しい。
(新エネルギー新聞 2021年4月掲載記事を一部編集)