8MWの太陽光発電所を所有しているある発電事業者が、「すでに1年以上定期的に点検しているが、今のところ不具合はまったく発生していない」と言い切っていた。
今まで、新エネルギーサポーターで発電所を点検してきた経験で言えば、大小さまざまではあるが、まったく不具合がないなどということはあり得ない。
例えば、雑草が生い茂っていた、樹木が伸びて影が掛かっていた、架台に錆が発生していた、ネジが緩んでいた、配線の取り回しが乱れていた、電圧上昇抑制が発生していた、土砂が流出していた、排水に難があり水たまりができていた、モジュールが汚れていた、モジュールが故障していた、など本当にさまざまな不具合が発生する。
この中で、特に見逃されがちなのが「モジュールの故障」だろう。
目で見るだけでは分からず、専門の点検機器(ソコデスやIVカーブトレーサー、サーモカメラ等)を使用し、専門のスキルがなければ発見できないからだ。
モジュールの故障率について、定量的なデータはまだ持ち合わせていないが、シリコン系モジュールをこれまで点検してきた経験から言えば、「1MW(約4000枚)の発電所で年1回の点検時に数枚の故障モジュールが見つかる」ことが多い。
大まかな傾向としては、やはり安いモジュールほど壊れる枚数が多くなる。
1MW(約4000枚)あたり1年間での故障数は、
優良モジュール=3枚以下
普通のモジュール=4枚~10枚以下
格安モジュール=11枚以上
という感覚だ。(ただし、メーカーによる違い、製造ロットによる違いも甚だしいので、一概には言えない。)
冒頭に紹介した8MWの発電所は、約32000枚のモジュールを搭載している。これだけの枚数をしっかり点検したならば、少なくとも数枚の故障モジュールはあって当然だろう。
「点検しているけど不具合は発生していない」という言葉は、「点検しているつもりだが、精度が低く、不具合を見逃している」と言い換えても良いかもしれない。
(新エネルギー新聞 2016年6月掲載記事を一部編集)