(新エネルギー新聞 2016年3月掲載記事を一部編集)
太陽光発電所を点検していると、太陽電池モジュールの不具合を見つけることが多い。
ただし、見た目が同じような不具合だとしても、原因や途中経過はさまざま。そのため、ひとつの点検手法だけで、すべての不具合を見つけられる、と考えてはいけない。
「これさえ使えばモジュールの不具合は全部発見できる!」と、特定のやり方を過信している向きもあるが、まだそこまで万能のやり方はない。コスト面も含めてどれも一長一短で、適材適所で使い分けることが大切だ。
今回紹介するのも、まさにそのような事例。
バックシートが焦げるほど異常発熱していたが、モジュール故障を容易に発見できるはずのSOKODESで計測した時には、『NG』判定がされず見逃してしまった。その後、サーモカメラでホットスポットを見つけたのだが、なぜSOKODESで発見できなかったのだろうか?
SOKODESの名誉のために急いで付け加えるが、この事例は、IVカーブトレーサーで測っても見つけられなかっただろう。なぜなら、『バックシートは焦げていたが、発電量はほとんど落ちていない』状態だったからだ。
SOKODESで測定しているのは、モジュールの抵抗値で、「メーカーの無償交換対象になるほど発電量が落ちているならば、抵抗値は高くて当然。ある程度以上、抵抗値が高い時にNGと判定」している。
発電量がほとんど落ちていない、ということは、モジュールの抵抗値もそれほど上がっておらず、SOKODESはNGではない、と判定してしまったのだ。
注意して欲しいのは、『バックシートの焦げはSOKODESやIVカーブトレーサーでは見つけられない』ということではなく、『発電量の低下を伴わないバックシートの焦げは、それらでは見つけられない』という違いだ。
結果として、「バックシートの焦げ」という問題が発生していても、原因の違いで、途中経過で発電量が落ちることもあれば落ちないこともある(症状が進めば、最終的には、どんな原因でも発電量は落ちる)。
「発電量が落ちていないければ放置でも良い」という考え方もあるが、安全性の面からは、バックシートが焦げるほど発熱していれば速やかに交換するべきだろう。
そのためには、目視で点検する、サーモカメラで点検する、EL検査をする、などが考えられるが、モジュール枚数が非常に多い場合には、コスト面も考慮すればドローンを使ったサーモ点検も有力な手段となるだろう。
ただし、ドローンによるサーモ点検も万能ではない、という点は重々承知しておきたい。
(新エネルギー新聞 2016年3月掲載記事を一部編集)