(新エネルギー新聞 2017年8月掲載記事を一部編集)
ある1MWの発電所でトラブルが発生しているが原因が分からない、という相談があった。
トラブル内容は、以下のとおり。
|
既にトラブルが発生している場合、『障害対応』(原因を特定し修繕する)を実施することになる。
ちなみに『障害対応』と『点検』はまったく違う作業で、『点検』は「健康診断」、『障害対応』は「治療」に例えられる。
『障害対応』の場合、できるだけ具体的に状況を把握することから始める。
PCSが停止する、というトラブルの原因はいくつでも想定できる。
状況を具体的に把握することで、想定原因を絞り込み、どのような対策を優先するかを決定し、優先順位の高い対策から実施していくことになる。
トラブル発生の仕方は千差万別なので、想定原因に対してひとつずつ対策を施し、問題が解決しなければ次の対策を練る、という、地道なやり方で潰していくしかない。
今回のトラブルは、「PCSが絶縁低下異常で停止」するが、「接続箱単位で絶縁抵抗を測定しても異常が分からずお手上げ」という相談だ。
実はこれに類似したトラブルは結構ある。『間欠地絡』と言うこともあるが、雨が降るなど地面やパネルが濡れている時だけ地絡(漏電の一種)が発生し、乾くと自然に治ってしまう現象だ。水が電気を流し、乾くと流れなくなる。調査に行った時にはすでに乾いていて、どの部位が地絡を起こしているか分からないのだ。
幸い今回の発電所はストリング単位で遠隔監視しているため、状況把握のためにトラブル発生前後のデータを解析してみた。
まず、接続箱ごとのデータをグラフ化したところ、発電量のバラ付きが非常に大きく、特に1番と5番の落ち込みが激しい。
そこで接続箱1番と5番のストリング単位のデータをグラフ化した。
ストリングごとのパネル枚数は同一なので、問題がなければグラフはきれいに重なっているはずだ。しかしご覧の通り接続箱1番のグラフは、これまで見たことがないほどデタラメ、接続箱5番も午後は揃っているが午前中のバラツキがひどい。
ただし5番のようなグラフはそれほど珍しくない。パネルの角度や影の入り方がストリングごとに異なり、午前中の太陽光の当たり方が違うというだけだ(そうは言ってもここまでバラツキがひどいのは珍しい)。
問題は1番の方。ストリングごとの発電量がこのようにデタラメなグラフは初めて見た。
他日や他の接続箱のデータとも比較したが、1番の異常さは突出しており、まずは接続箱1番の、発電量がおかしいストリングを重点的に調査する、という方向性を決めた。
このように遠隔監視のデータを上手に解析すると、闇雲に現場に行って片っ端から調査するのに比べて効率化を図れる。
トラブル発生時には、遠隔監視データを解析することから始めるのが『障害対応』の近道と言える。
(新エネルギー新聞 2017年8月掲載記事を一部編集)