(新エネルギー新聞 2021年3月掲載記事を一部編集)
発電事業者から太陽光発電所に関する相談を受ける中で、「今の発電量が妥当か?問題なく発電しているか?」を判断できる方はほとんどいない。
そもそも発電量を把握している方が少ないが、仮に今現在の実発電量を知っていても問題のあり、なしを判断することは難しい。その発電所のベストの発電量がいくらか?、は、不可避な発電阻害要因が個々に異なるため一概に言えないし、日射量の増減という変動要因も絡むからだ。
一方、売電ロスはどの発電所でも発生している。ロス率が許容範囲内か、それを超えているか、もしくは大幅に超えているか、という違いはあるが、売電ロスの発生を避けることはできない。
ロス率が許容範囲内ならそのまま様子見で良いが、大幅に下落している場合は、早めに気づいて対処しなければ損失額が膨らみ続けることになる。
ロス率の許容範囲としては、毎年△1~△2%程度だろう(初期の発電量がベストである前提。中には設計・施工ミスで初期値がベストではない場合もあるので注意が必要だ)。
パネルの経年劣化が年△0.7%程度と言われており、PCSや配線の経年劣化、パネル汚れの影響なども考えれば、毎年△1~△2%程度の低下は仕方ないだろう。
それすらも許容できない、と躍起になったところで、掛けた費用以上のメリットは出にくい。
だが、毎年△3%以上減少していれば売電ロスによる損失額が大きく、対策に費用を掛けた方が良い場合が増える。
単純計算だが△3%が5年続けば、5年目で△15%の売電ロス。低圧発電所で初年度200万円の売電額ならば、5年目は170万円に減少し30万円の損失だ。これに気づかず対策を行わなければ、6年目以降も毎年これ以上の損失額を出し続けることになる。
将来の大きな損失を回避するために、ある程度の費用を掛けても良いだろう。
実際の例で考えてみよう。パワコン9台の低圧発電所で1台停止していることに6ヶ月間気づかなかった事例がある。1年間に換算すると約△5%、年間売電金額が200万円なら10万円の損失だ(本来、季節によって損失額は変わるがここでは単純化した)。
やはり低圧発電所でパワコン5台で入力は5系統、つまり25ストリングある内、2ストリングが6ヶ月間発電0という事例もあった。1年間に換算すると約△4%、年間200万円なら8万円の損失。
どちらも半年ほどでたまたま気づいたが、気づかずに1年以上放置される可能性も高かった。
年間数%のロスとたかをくくっていると、塵も積もれば山となり、気づいた時には取り返しのつかない損失額になってしまう。
売電ロスによる損失額がいくらか?、それは許容範囲か?、許容範囲でないとすれば対策にどれぐらい掛かりそうか?
発電量の解析ができるO&M業者と相談しながら検討して欲しい。
(新エネルギー新聞 2021年3月掲載記事を一部編集)
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